楽園ブログ

「いつも心に太陽を!」そんな気持ちで感じたことを綴っています。

『自己決定理論』を知っていますか?

心理学の「使える理論」

対人支援を主な仕事にしていると、そのポジションで、いわゆる「使える理論」というのがはっきりしてくるのですが、これは、心理カウンセリングでも、キャリア支援でも同じだと思いますよ。「理論なんて」、とネガティブな意見を持っている人もいますが、わたしは全くそうは思いません。ですから、そんな現実の支援の場で確実に力を発揮している理論について、わたしなりにブログで紹介しているわけですが、今回は、心理学を学んでいる人ならマスト・アイテムである、デシ&ライアンの「自己決定理論」について、わたしなりの学びを綴ってみます。

「自己決定理論」とは?

「自己決定理論」は、「動機づけ理論」のことです。「動機づけ」というのは、人に、行動を起こさせ、その目標に向かって維持させる機能のことで、大まかにいうと、人を含めた動物全般の行動原因であり、行動の方向性を定める要因のことです。心理学の用語は難しいので、ぶっちゃけちゃうと、「何でそれをするの?」ということですかね。で、これがなんで重要なのか、っていうと、支援が必要な人は、程度の差こそあれ、心が折れている(折れかかっている)人なわけですから、支援する側は、その人が何でそれをしてきたのか、を探ることでクライエントの理解が深まるということなんですね。そして、さらに重要なことは、クライエントの現在地を確認することによって、支援の方法が変わってくるということですよ。

デシ&ライアンの「自己決定理論」

「動機づけ理論」というと、特に心理学を学んでいなくても、誰もが耳にしたことがある有名な学説があります。米国の心理学者アブラハム・マズローが、「人間は自己実現に向かって絶えず成長する」とし、人間の欲求を5段階の階層で理論化した、有名な「欲求5段階説(Maslow's  hierarchy of needs)」です。もちろんこれは、20世紀の偉大な社会的発見でありますが、いざ対人支援、ということになると、デシ&ライアンの「自己決定理論」の輝きにも素晴らしいものがありますよ。こんなにスゴい理論なのに、これまで「公認心理師」試験に出題されていないのが不思議でなりませんよ。第5回公認心理師試験では、出題されるかも知れませんね。いや、出題してほしいですよ。

デシ&ライアンの研究は、人の動機づけについて、「自律性」をキーにして段階的に整理したものです。人の動機づけには、「外発的動機づけ」と「内発的動機づけ」がありますが、これは、何かのためにやるのか、その行動自体に意義を見いだしてやるのか、ということですよ。もちろん、人が躓いて心を折ってしまうのは、何かのためにやる、「外発的動機づけ」によって行動している場合が多いわけです。デシ&ライアンの研究の素晴らしいところは、以下のように、この「外発的動機づけ」について徹底した分析を行ったところです。

デシ&ライアンによる「外発的動機づけ」のレベル

どうですか?「何かのためにする」という行動も、「自律性」をキーに考えると、レベルに分けられることがわかりますね。「外発的」と言っても、怒られるからイヤイヤする、というレベルから、そうすることが自分の目的や価値感からして相応しいと感じるからする、というところまで様々ですよ。

さて、対人支援の話ですよ。わたしは、心の折れかかった人に対して、支援する側としては、この理論を踏まえて注意深く、はげましや伝え返しを繰り返しながら言語的な追跡を行い、根気強く傾聴する必要があると考えています。今も思い出すのは、昔々のテレビ番組「3年B組金八先生」で、金八先生の生徒の兄弟が東大受験に失敗して自殺を図るという話ですよ。そのとき金八先生は、自分の生徒たちを前になんて言ったか、今でも憶えていますよ。金八先生は、彼は優秀ゆえに東大に入らなければならないという気持ちで頑張ってきた、しかしそれが果たせずに絶望して死を選んでしまった、でも、彼は東大に入って何をしたいのか、将来どうしたいのか、もしそれがわかっていたら、もう一年待てたはずだ!って、叫んだのですよ。わたしは、心が奮えると同時に、こんなふうに言える大人になりたい、と心から思いましたよ。どんなかたちでも、人を支援する仕事に就きたい、というわたしの心のエネルギーとも言うべき「学び」でした。もちろん、何かのためにする「外発的動機づけ」ではなく、行動それ自体に動機づけられる「内発的動機づけ」こそが、人の行動要因として最強なのだということは理解しています。でも、有名大学に入りたい、弁護士になりたい、などという人生の目的をまえに、多くの人が「外発的動機づけ」の中で輝いたり、苦しんだりしているのが現実だと思うのです。そう考えると、デシ&ライアンの「自己決定理論」には、われわれが知るべき多くの「学び」があると思うのですよ。そして、ついでに「国家資格キャリアコンサルタント」合格を目指すわたし自身の行動要因についても深く内省しながら、今日も誰かの心を見つめていくわたしなのですよ。

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